|
あなたがこれを読む頃にはもう直接伝えてると思うけど、おめでとう。
今日(もう昨日か)、直接言えなくてごめんね。
あなたは、とても物静かで不思議な人。
どんなテストでも頑張って、授業中もたくさん光って、信じられないくらい絵が上手で、あなたが塾に来たときに僕がしゃがみ込むと(あなたも背が伸びたから僕がしゃがむのもちょっと不自然なんだけど、中一の頃からの癖でついやっちゃう)必ず立ち止まってくれて、あんまり褒めるとちょっと赤くなって、ひゅーっとどこかへ行ってしまう。
妖精みたいに見えるときがある。よくわからない表現だけど。
俺さ、ときどき思うんだよ、あなたはもしかしたら、考えること、思うこと、感じること、そういう色々がたくさん心の中に詰まっていて、それが驚くほど深い色をしていて、でも、それにちゃんと似合う言葉が見つからなくて、もどかしく感じることがあるんじゃないかな、って。
これ、外れてたらごめん。
箸本のたわ言だと思って聞き流して。
で、もしそうだったときのために一応言っておくとね、言葉がさ、魔法みたいに降ってくるときっていうのがあるの。
「ああ、この言葉が自分だな」って思えるほどの、言葉が。
いつかあると思うな、あなたには。
授業の中で、僕はあなたの言葉が輝いてるところを何度も見てきた。
それはね、口には出さない言葉でもいいんだ。
誰にも言わない言葉でもいいんだ。
そして、あなたは、嘘がないなあ。
語らないけれど、はっきり伝えてくれる。
あなたが頷いたら、本当にイエスなんだろう。
あなたが首を振ったら、本当にノーなんだろう。
何というか、そのことに、ありがとうと言いたい。
「嬉しかった?」と聞いたときの「はい」というしっかりとした声の感じを、「悔しかった?」と聞いたときの迷いのない頷き方を、僕はよく覚えてる。
あなたがごまかすように首をひねったのは、僕が「夏服似合うね」と言ったときくらいじゃないか。それはまあ、無理もない。
何が言いたいのかよくわからなくなってきた。
きっと、僕もまた、言葉を探しながら生きてるんだろう。
とにかく、あなたの名前をタイトルにした文章が書きたかった。
本当に、おめでとう。
あなたが嬉しかったのが、嬉しかった。
それ以上、大したことが言えない。
でも、これ以上の言葉もたぶんない。
おめでとう、すみれ。 |