就職先として開拓塾を志望する学生が豊橋本部を訪れるのを見ると、ときどき、自分が大学生だった頃のことを思い出す。
そして、「社会人のほうが学生より大変」とかいうのは、どっか違う気がするな、といつも思う。
「高校入試より大学入試のほうが大変」、「入社してからのほうが就活より大変」、何かが違う。
「じゃあ社会人のほうが楽なんですか」ってそういうことじゃないけど、違うんだなー。違う。
僕が違和感を覚えるのは、要するに、上にあるような発言の中の「大変」という言葉が、基本的に、測定・計量可能な時間や物量を客観的に参照しているからだろう。
たとえば、高校入試より大学入試のほうが覚えることが多いとか、学生より社会人のほうが相対的に果たさなければならない責任が多いとか。
けどさ、阿呆みたいな例だけど、十五歳が三キロ走るのと、十八歳が五キロ走るのと、どっちが「大変」かなんて言えるのか?三キロが五キロに増えたからそっちのほうが大変なのか?
体力が上がっても?知恵がついても?経験を積んでも?意志力を得ても?
何だかんだで、いつだって結構、自分のギリギリが試される方向へと、現実は進んでしまうものなんじゃないだろうか。
それぞれの時期には、それぞれの時期にしか特別に感じられないものがあるわけだ。
「今思えば、高校入試なんて……」ってその「今思えば」はどうでもいいのよ。
そのときどう思ったかが問題なんだ。
そのときどう生きていたかが問題なんだ。
そして今、まさにこの現在、彼らは十五歳を生きているということが問題なんだ。
戻ろう、就活の話。
就職活動というのは、アレはアレで、なかなかのものだ。
「就職した後の大変さに比べれば、就活なんて……」っていう問題じゃないってことね。
僕自身の就活はなかなか大胆で、恐ろしくいい加減で、そのくせ奇跡的な(と言っていいんじゃないですか、塾長)ハッピーエンドを迎えたから、「大変」という言葉はおこがましいけれど、やっぱりアレ、就活、嫌だったなあ。本当に嫌だった。
その嫌さというのはたぶん、「結局のところ、まだ自分は何者にもなれていないんだ」という事実と向き合わざるを得ない気分の悪さ、だったと思う。僕の場合は。
告知されるモラトリアムの終焉。まあ、告知したのは自分なんだけどね。
あの時期の何とも言えない、ぬるい苛立ちと、強烈な焦燥と、ひたひた近づいてくるストーカーみたいな不安は、ちょっと忘れられない。
「何かにならなくちゃいけない」。
「何にもなれないかもしれない」。
そんな中で、何とか自分であろうと、必死だったなあ。
流されたり偽ったり妥協したり、何とかそういうのはナシで終わってやるんだ、って。
就活ごときで折れてたまるか、って。気に入らなかったら切って捨ててやる、って。
わざわざ京都から東京まで会社説明会を受けに行って、会場で手渡されたパンフレットに載ってた会社のキャッチコピーみたいなのが気に入らないってだけで、説明会を受けずに帰ったりしてた。何やってんだ。説明くらい聞いてやれよ俺。
とがってたなあ。
二十二歳。
中間はなかった。
1か、ゼロかだった。
だから、「ここだ」と決めた開拓塾以外の選考は受けなかった。
落ちたらどうするつもりだったんだろう、僕は。
なかったな。そういうマジな仮定は、なかった。
じゃあ「必ず受かる」前提で動いていたのかというと、全く違う。
どうかしているかもしれないが、僕は「受かる」「落ちる」という観点で就活をしていなかった。
そこが、たとえば大学受験との決定的な違い。
就活では、「何をすれば受かるのか」なんて全く考えなかった。
学生から社会人になるという、このわけのわからない時期を、何とか箸本竜也のまま乗り切るんだということが、最大の関心事だった。
合否じゃなかった。
僕の就活を支えたのは、自分を見失いさえしなければ、出会うべきものに出会うんだという、自信過剰でロマンチックな信念だったのだと思う。
やれやれ。
きっと学生って言ったって色々で、僕の就活なんかとは月とスッポン(もちろん私がスッポンです)の就活をしてる子だっているんだろう。
ただ、あの独特の不安や焦りと全く無縁で生きられる学生、というか人間、というのは、そうはいないんじゃなかろうか。
ときどき、就活をやってる学生を応援しようかな、という感情になることがある。
でも、しない。
それは、メチャクチャ薄っぺらいもの、僕なんかがやったら。
申し訳ないが、今の僕に、顔も見えない学生を本気で応援できるキャパはない。
ただ、無責任な中で思うのは、あなたが本気であなたであって、その道筋で出会うのが、然るべき職場であるといいな、ということ。
それがたまたま(あるいは必然に)開拓塾であったなら、それはそれでとても嬉しい。
そこに、選ばれる僕たちがいて、選ばれるあなたがいたなら。
そんなの、ちょっと天文学的な確率にも思えるけど、起こるべきことが起こるときってのは、そんなもんだろ。
グッド・ナイト、& グッド・ラック。 |