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alone(and almost I’m OK,almost) 2008年07月23日 
箸本‘husky’竜也 

 岡崎先生にしかわからないかもしれないが、この文章のラストは、僕が最も好きな小説のひとつ、レイモンド・チャンドラーの「長いお別れ」のパロディである。

 長神先生のせいで(って別に責めてないですが)、久しぶりに「一人である」ということについて正面きって考える機会があった。

 一人が好きなんですか、とたまに聞かれる。好きだね、と僕は答える。
 ただ、それを説明するのは難しい。
 カツオ(サザエさんの弟、ではなく、食べる魚の)が好き、という「好き」とは違う。
 テニスが好き、という「好き」とも違う。
 あなたのことが好き、という「好き」とも違う。
 誰かといるのが嫌いなわけじゃないし、一人の時間が絶対に必要、とかいうのとも違うと思う。
 僕が一人が好き、というのは、敢えて言うなら、「僕は一人でも圧倒的に大丈夫」ということじゃないだろうか。

 僕は仕事を除けばほとんどいつも一人でいるが、別に孤独を感じるわけでもない。
 だいたい、簡単に「孤独」とか言っちゃいけない。
 そんなふうに言う人間は大抵、本当の孤独なんて知らない。
 本当の孤独って何でしょう?わかりませんね。だから簡単に言えない。僕が思いつくのは、自分を孤独から救い上げてくれていた誰かを、決定的に、恒久的に失うこと、という回答くらいだ。
 本当の孤独とは、いったん孤独の底に沈んで、そこから水面に浮き上がって、もう一度深海へ引きずり込まれることであるような気がする。ただの想像ですけどね。
 そして思うに、多少温かい言い方をすると、大抵の「孤独な」人間は、自分が思っているほど孤独じゃない。

 さて。
 ひとつ言えるのは、一人であることを楽しめる僕の傾向は、自然発生的なものではなく、自らの選択であり決定である、ということだ。
 たとえばカツオを好きになることに選択の余地はない。好きなものは好き、というアレだ。
 しかし僕の場合、一人でいることが好き、というのは単なる「好み」の問題ではない。
 それは、僕が十代の後半に選びとったひとつの生き方だからだ。

 十五の頃、寂しいという感情から自由になろうと誓った。
 一人で絶対に大丈夫な人間になろうと。
 どうしてそんなふうに思ったのかわからない。
 それが強さのような気がしたのかな。
 今思えばちょっとわけがわからないし、浅はかだったとも思うが、どうしても十五の少年を責める気になれない。
 とにかく、僕は自分のひとつの生き方としてそう決めて、それを実現するために、思いつく限りのあらゆることを、数年間にわたって実行していった。

 断っておくが、それは「努力」というクリーンな言葉でくくれるような時代ではなかった。
 もっと血生臭く、残酷で、ある意味では悪意に満ちていて。

 間違いだったのかもしれないと、ときどき思う。
 多くの犠牲を払いすぎたと、ときどき思う。
 でも、後悔したことは一度もない。
 ひどい時代だったかもしれないが、それを通じて、僕は学んだからだ。
 本当に「こういう人間になりたい」と望み、「こう生きよう」と決めて、そのためにあらゆる手段を惜しまず生き抜いていけば、そうなれる場合もある、ということを。

 一人が好き、というのは、それ自体、正しくも間違ってもいない。
 この世には善も悪も正しいも間違っているも本当に明確にはなく、戦争も煙草をめぐる議論もその一端にすぎない。
 じゃあ、何があるのか?
 思うにそれは、勝敗と自己決定ではなかろうか。
 何が勝ちで何が負けかという問題はここでは扱わないよ、面倒くさいから。
 極論すれば、それはあなたにしか決められないことであって。
 ただ少なくとも、戦ったのか、ということ。
 そして少なくとも、自分が選びとったものなのか、ということ。

 一人であることを好きでいられる、それは僕が選びとり、勝ちとったものだ。
 簡単に手放してたまるか。
 そのことに、多くの場面で助けてもらった。
 こういう人間でなかったら、耐えられないことがあったろう。
 こういう人間でなかったら、見つめられないことがあったろう。
 もちろん、こういう人間であればこそ、招いた不運もあったろう。
 こういう人間であればこそ、避けられなかった過ちもあったろう。
 だから繰り返し、そこには善も悪も正も誤も可も不可もないが、何であれ、自分が選んだ生き方であることに変わりはない。
 そういう人間になれて……よかった、と単純には言えないが、少なくとも、悪くない。
 感じとしては、悪くない。

 一人で、大丈夫。
 そのことが今、全てのことを埋め合わせてくれている。
 何もかもを。


 ただし、ある種の空白だけは別だ。
 その空白を埋める方法は、いまだに発見されていない。

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