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手紙ありがとう。
あの夜、一人で校舎に残って、何度も君の手紙を読んで、正直に言うと、少しだけ泣いた。
授業の中では絶対に見せない君の痛みが、決して真顔では言わない君の望みが、あまりにも切実で、透き通った願いが、胸に刺さって。君がどれくらい傷ついて、どれくらい……ある意味じゃ無理をして、どんなふうに生きようとしていたのか、それが伝わってきて、切なかった。
それでも僕は……講座で会ったときにはちょっとしか言えなかったけど、君の手紙が、本当に、本当に嬉しかった。僕が二十四年間で出会った全ての言葉の中でも、あれほど嬉しいものはあまりなかったと思う。
ありがとう。
君は優しいから、いつだって冗談めかして話すんだと思う。相手にとって重くなりすぎないように。それが君にとって実はけっこうシリアスなものであっても、それを相手に投げつけることが、君にはできないんだと思う。
手紙の中で、君は僕にひとつ、質問をした。
きっと、「イエス」と答えるのが優しさなんだろうな。君は僕にそう言ってほしかったのかもしれない。
弁解じゃないけど、マジで考えた。
別に「イエス」と言えば嘘になるとも思わない。そう信じればいいだけの話なんだから。事実、そう信じるべきなのかもしれない。君が「イエス」と信じられるなら、信じていい。
でもごめん、僕には答えられない。なぜなら、君がした質問を、僕自身、自分にときどき問いかけてしまうから。で、答えは出ない。だから、たまらなく怖くなる。僕の人生において、もしその答えが「ノー」ならば、と。
もう二度と、ね。
君はこれからも失敗するかもしれない。
あるいは、僕も。
君はこれからもズタズタになるかもしれない。
あるいは、僕も。
君は何かを疑い、あきらめそうになるかもしれない。
あるいは、僕も。
君はずっと答えを見つけられないまま、歩き続けるはめになるかもしれない。
あるいは、僕も。
わかるかな、ある意味じゃ、僕だって君と何も変わらないんだよ。
でも、君よりちょうど十年長く生きてるから、ひとつだけ偉そうなことを言おう。
人が強いのか弱いのか、僕にはわからない。強い人と弱い人がいるのかどうかもわからない。結局、みんな同じなのかもしれない。
ただ、強くなれる場面というのは確実にある。
嘘じゃない、慰めでもない、誓ってもいい。
ミキ、僕はちょっと、強くなったんだよ。
それを本当に見せたい相手がどこにもいないってことが、ときどき悲しくなるけどね。
大丈夫、君は自分が思うほど弱くない。
別の言い方のほうがいいかな、君には弱い部分もあるが、自分でもよくわかっていないくらい強い部分も持ってる。そういうこと。
すげー偉そうだけど、この僕が言うんだ、信じなさい。
答えが出なくても、次の場面を見に行こう。引きずるということと進めないということは別物だ。僕は塾講師で、答えを導くのもひとつの仕事。でも、何ていうか、生きていくということについて、答えを出すばかりが能じゃない。そうだろう?
たくさん話しにおいで。
たくさん泣きにくればいい。
そんなことが何だ、君の強さとは何の関係もない。
手紙の中で君が僕に言ってくれた言葉を、そのまま君に返す。
悲しんで、傷ついて、ときに色あせても、それでも、全て帳消しにできるような、笑える場面を、美しい場面を、たくさん見よう。
君には……僕たちには、きっとそれができるよ。 |