中3の入塾当時、マナミはBクラス。(学力別A・Bクラスによる)。志望校は豊橋南。得意科目は社会。苦手科目は数学。
彼女は、1学期中間テストから社会100点を取り続けたことで、『 やれば、できる! 』という自信を確実につかみ、点数、順位にこだわり始めた。志望校も豊橋東に変えた。 2学期中間。順位も着実に上がってきた。しかし、どうしても10番の壁を越えられない。 『 がんばれ、マナミ! 』心の中で何度も叫んだ。
今まで以上に、マナミは奮闘した。我々が指示したことを全てこなしていった。
年が明け、マナミは東にするか、時習館を受けるか、迷うほどにまで成長した。
「 マナミ、時習館の受かる可能性は40%。本当によくがんばった。どっちを受けたってかまわない。どっちを受けることが正しいなんていうものでもない。おまえが決めたことが正しいんだ。自分の道を自分で決める強さを持ってほしい。俺は、おまえが決めたことにただ応援したい。どうする? 」
「 ・・・時習館を受ける。 」
マナミはBグループ時習館、Aグループ国府で出願。
いよいよ、Bグループ入試の当日。なんとしても46点以上とってきてくれ、祈るような思い。
いてもたってもいられず、その日の夜、電話をした。しかし、43点しかとれなかったという。
なんて言ったらいいのか、わからなかった。
大失敗である。20回入試を受けたとして、1回取るか取らないかぐらいの大失敗。
Aグループ前日、いつもと同じように塾に来た。一生懸命5時間の授業を受けた。
私は最後に、全生徒に言った。
「 Bグループが本命の生徒にとっては、明日のAグループのテストは気合いがはいらないかもしれない。Bグループが本命の者にとっては明日、最高点を取ることは意味がないかもしれない。でも、それは高校の合格ということにおいて言えるだけだ。おまえたちにとって、中学校生活最後のテストだ。俺は、おまえたちがどっちが本命だろうと、恐れずに、あわてずに、今まで学んできた全てをぶつけて、最高のペーパーテストに仕上げてほしい。誰のためでもない。誰に認められるためでもない。おまえたち一人ひとりの中学校生活のフィナーレだ。そんな気持ちで、明日のテストを受けてほしい。 」
5時間の授業を受けた後とは思えないほど、みんなよく聞いていた。『 明日、がんばる 』という気がひしひしと伝わってきた。一番、それを伝えたかったマナミの目には、うっすらと涙が浮かんでいた。
グループの試験が終わり、翌日マナミは塾に来た。
笑顔たっぷりで、「 先生、48点。社会10点、英語9.5点、数学9.5点、理科9.5点、国語9.5点。 」
48点が仮にBグループだったら、時習館の合格は間違いないどころか、トップグループの点数である。マナミの口からはいっさい「 逆だったらよかったのに・・・ 」というような言葉は出なかった。
「 先生、私、国府で一位かな? 」
「 48点なら、おまえが一位だ。マナミ、最後に決めたな! 」
私は涙をこらえるので精一杯だった。
「 マナミ、おまえは本当に強くなった。俺なんかよりずっと強いよ。今日、おまえからいっぱい学んだ。 」
マナミは少しだけ照れていた。
あのときのマナミの照れ笑いが、今も心に焼きついている。 |